粘度計の基本原理から選び方まで解説

粘度計は、化学・製造業や研究機関での製品開発や品質管理に欠かせない測定機器です。本記事では、粘度計の基本原理から選び方までを解説します。
まず、粘度の概念と評価方法を紹介し、ニュートン流体と非ニュートン流体の違いを解説。次に、JIS Z 8803に基づく粘度測定の基準を説明します。
さらに、回転式粘度計の原理と測定範囲、落球粘度計の測定原理と特徴を詳しく解説。この知識があれば、あなたの用途に合った粘度計を選ぶことが可能です。
最後に、試料温度や測定環境が精度に与える影響、校正と適切な機器管理の重要性を紹介します。これらのポイントを押さえて、正確な粘度測定を行ってください。
本記事を参考に、あなたの業務に最適な粘度計選びをしていただけることで、品質管理や製品開発の効率向上に貢献できることを期待しています。

粘度計の基本原理と測定技術

粘度計は、液体や粘性のある物質の流れの抵抗を測定するための装置です。測定技術には種類があり、回転粘度計や落球粘度計などが一般的です。
回転粘度計は、液体のせん断速度とせん断応力の関係を計測することで、粘度を求めます。試料を一定の速度で回転させ、回転にかかる抵抗力を測定します。この方法は、一定の温度や速度範囲で精度の高い測定が可能です。
落球粘度計は、液体中に球を落下させ、球の落下速度を測定します。落下速度と液体の密度から粘度が求められます。この方法は、液体の流動性や温度変化に対応した測定が可能です。
それぞれの測定技術には、特性や適用範囲があり、製品や用途に合わせて選択する必要があります。また、測定結果の信頼性や精度を確保するために、標準校正方法を採用したり、JISや国際規格に準拠した計測器を使用することが重要です。

粘度とは?その概念と評価方法

粘度とは、流体が流れる際に内部で生じる抵抗力のことで、物質の流れやすさを表す指標です。高粘度の物質は、流れにくく、低粘度の物質は、流れやすいです。
粘度の評価方法として、動的粘度と動粘係数があります。動的粘度は、流体のせん断速度に比例して生じる抵抗力を示す指標で、単位はmPa・sです。動粘係数は、動的粘度を密度で除した値で、単位はmm²/sです。
粘度の測定は、粘度計を用いて行われることが一般的ですが、それぞれの測定方法には特徴や限界があります。例えば、回転粘度計は粘性が高い液体に適しており、落球粘度計は、粘性が低い液体に適しています。評価方法を選択する際には、物質の特性や測定範囲を考慮することが重要です。

ニュートン流体と非ニュートン流体の違い

液体の粘性には、ニュートン流体と非ニュートン流体があります。ニュートン流体は、せん断速度とせん断応力の関係が線形で、粘度が一定の流体です。水やエタノールなどがニュートン流体の例です。
非ニュートン流体は、せん断速度とせん断応力の関係が非線形で、粘度が変化する流体です。シャンプーやペースト状の物質が非ニュートン流体の例です。非ニュートン流体はさらに、せん断速度が増加すると粘度が減少するシアー・シニング流体や、逆に粘度が増加するシアー・シックニング流体に分類されます。
粘度計でニュートン流体と非ニュートン流体を測定する際には、それぞれの特性や測定範囲に注意が必要です。非ニュートン流体は、粘度が変化するため、測定条件や方法の選択に慎重さが求められます。ニュートン流体や非ニュートン流体の違いを理解し、適切な測定技術を選択することが、粘度の正確な評価には欠かせません。

粘度測定におけるJIS Z 8803の基準

粘度測定は、化学・製造業や研究機関で重要な要素であり、精度や信頼性が求められます。その際に基本となるのが、JIS Z 8803という日本工業規格です。この基準では、粘度計の種類や測定方法、粘度の単位などが定められています。

JIS Z 8803には、回転式粘度計や落球粘度計、毛細管粘度計など、様々な粘度計が規定されています。また、測定方法についても、温度や密度を一定に保つための方法や機器の校正が規定されており、測定結果の信頼性を担保しています。

粘度の単位では、国際的に用いられる mPa・sが採用されています。各種粘度計は、測定範囲や精度が異なるため、対象となる流体や用途に応じて適切な粘度計を選択することが求められます。

様々な流体や状態に対応するため、JIS Z 8803では製品比較に役立つ情報が提供されています。これにより、エンジニアや品質管理責任者、購買担当者は、適切な粘度計や測定方法を選択することが可能となります。

回転式粘度計の原理と測定範囲

回転式粘度計は、一般的かつ広く使用されている粘度計の一つで、液体や流体の粘性を測定するための装置です。測定原理は、一定の速度で回転する円筒や円錐状の回転子を流体中に浸し、流体の抵抗力によって生じるトルクを計測することで粘性が求められます。
この回転式粘度計は、多種多様な流体や環境に対応しており、測定範囲が広いことが特徴です。ニュートン流体から非ニュートン流体まで、粘性が低い水や溶液から高粘性のオイルや樹脂類まで対応します。
また、回転式粘度計には、測定速度や回転子の形状を変えることで、さらに測定範囲を広げることが可能です。そのため、エンジニアや品質管理責任者は、試料の種類や粘性の範囲に応じて最適な測定条件を選択することができます。
回転式粘度計は、その信頼性と測定範囲の広さから、化学・製造業や研究機関において重宝される粘度計となっています。

落球粘度計とは?その測定原理と特徴

落球粘度計は、液体の粘性を測定するための装置で、原理は、球形の試料を一定の高さから落下させ、その落下時間を計測することで粘性が求められます。この方法は、ストークスの法則に基づいており、重力と流体抵抗力のバランスから粘性を推定します。
落球粘度計は、計測範囲が回転式粘度計に比べて狭いものの、非常にシンプルで扱いやすい点が特徴です。測定対象の試料を細管内に入れ、落下する球の大きさや密度を変えることで、適切な粘性範囲に対応することができます。
また、落球粘度計は、装置が小型で簡単な構造であるため、比較的低コストで導入することが可能です。そのため、中小規模の製造業や研究機関などで、コストパフォーマンスと使い勝手を重視する場合に採用されることが多いです。
落球粘度計は、そのシンプルさと利便性から、特定の測定範囲において重要な役割を果たす粘度計となっています。

粘度計の選定と正確な測定方法

粘度計の選定には、計測対象となる液体の特性や測定環境、目的に応じたタイプが適切である。正確な測定方法は、試料の取り扱いや温度管理に注意を払い、校正を行って精度を確保することが大切だ。
粘度計の種類には、回転式、落球式、振動式、毛細管式などがあり、それぞれ特徴や適用範囲が異なる。液体のニュートン流体性、温度変化による粘度の変化、また測定速度や精度の要求を考慮し、最適なタイプの粘度計を選ぶことが必要だ。
正確な測定方法においては、試料の調整や温度管理が重要である。試料は均一であることが望ましく、泡や不純物がないことを確認する。また、測定時の試料温度が一定であり、粘度の変化が最小限に抑えられるように注意を払う。さらに、測定前に粘度計の校正を行い、精度を確保することが不可欠である。

用途に合わせた粘度計の選び方とポイント

用途に応じた粘度計の選び方には以下のポイントがある。

  • 計測範囲: 測定対象の粘度が計測範囲内であることを確認する。
  • 精度: 目的に応じて必要な精度が達成できるかを確認する。
  • 測定速度: 測定時間を短縮できる高速測定が可能か、または精度と速度のバランスが適切かを検討する。
  • 測定方法: 対象物の粘度特性や容器の形状などにより、回転式、落球式、振動式、毛細管式などの測定方法が最適かを判断する。
  • 操作性と安全性: 操作が容易で、誤操作のリスクが低い製品が望ましい。

また、業務用途や研究用途での使用に応じて、機能や性能が異なる粘度計を選定することが重要である。例えば、品質管理や製造現場での利用では耐久性や簡便さが求められるが、研究所などでの使用では詳細なデータ分析や追跡が可能な製品が適している。

試料温度と測定環境が精度に与える影響

試料温度と測定環境は粘度計の精度に大きな影響を与える。試料の温度変化は、粘度の変化に直結し、測定結果に誤差を生じさせる要因となる。特に温度に敏感な液体では、温度管理が重要である。
測定環境においては、振動や空気の流れ、温度変化が影響を与えることが考えられる。振動は、振動式粘度計において特に影響が大きいため、振動が少ない場所での測定が望ましい。また、温度変化や空気の流れは、試料温度に影響を与えるため、安定した環境下での測定が必要である。
正確な測定結果を得るためには、試料温度の一定化や測定環境の安定化が求められる。これらの条件を満たすことで、粘度計による測定精度を向上させることが可能となる。

校正と適切な機器管理の重要性

校正は、測定器具の正確性と精度を維持するために行われる工程で、化学・製造業や研究機関におけるエンジニアや品質管理責任者、購買担当者にとって非常に重要な役割を果たします。適切な機器管理が行われることで、製品の品質や開発プロセスにおける信頼性が向上し、研究成果の正確さや信頼性が確保されます。
機器管理においては、使用する測定器具の種類や状態に応じて定期的な校正が必要です。特に、液体や流体の粘度を測定する粘度計の正確な校正は、製品の品質や機能性を評価する上で欠かせません。校正によって、計測データの信頼性や再現性が確保され、トラブルや事故のリスクを低減することができます。
校正方法は一般的にJISや国際建設的な標準に従って行われ、計測器具のメンテナンスや管理においても、この標準に基づいた手続きが遵守されることが求められます。また、各種測定器具の校正には、正確な比較が可能な標準試料やサンプルが用いられます。
適切な機器管理の一環として、校正や保守サービスを提供する専門企業に依頼することが一般的です。これにより、機器の長寿命化や性能の維持向上が図られ、さまざまな分野での効率的な研究開発や製造活動が支援されます。

粘度計選びのまとめ

粘度計の選択に際しては、以下のポイントに留意することが重要です。

  • 使用目的や測定対象の液体の性質に合ったタイプの粘度計を選ぶ
  • 測定範囲や精度、測定方法に基づいて適切な製品を検討する
  • 測定環境や周囲条件に適した機器を選定する
  • 信頼性の高いメーカーやサプライヤーから購入する
  • 保守や校正サービスを提供する企業との契約を検討する

以上のポイントを考慮し、適切な粘度計を選択することで、正確な測定結果が得られ、製品の品質向上や研究開発の効率化が図られます。今後の操作に役立てるため、この記事に関する質問や検討事項があれば、お気軽にお問い合わせください。さらに詳しい情報や製品比較を求める場合は、弊社サイト内の各種粘度計に関するページや資料をご参照ください。

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